「っは……もッ、無理だ」

いくらか走れば、もう諦めたのか誰も居なくなっていた。
足取りはフラフラになって、立っているのもやっと。
大分走ったみたいで、景色も見たことないものに変わっている。



「う、わー……ここどっ!?」

軽い衝突で体が少し後ろへ弾かれた。(あ、今日で2回目だ)



「ごめ……!平気?」
「……あぁ。」
「あ!聞きたいことあるんだけど……」
「何だよ」
「えとさ、第二寮ってどうやって行くの?」


黒髪のだるそうな顔をしたやつに聞く。
早く寮決めなきゃ今日野宿だ……!




「……そこを右」
「え、そんだけ?」
「ああ。」
「ありがとう、俺もう行くな!じゃ!」
「……おう(変なやつ)」



笑みを浮かべれば少し、ほんの少しだけ口の端を上げてくれて、
上機嫌で角を右に曲がった。(お、建物あった……!)







「ここが第二寮かー」

眺めてみても全然寮には見えなくて、
ただただ呆然と見つめ続ける。



「あ、もしかして?」

ぼけっとしていた顔を引き締めて、
声の元へと顔を向けた(アホ面は流石にやばい)。
木々の隙間から光がこぼれ目を細める。





「はい、そうですけど」
「やっぱりなー!ハーフって聞いてたんだけど……」


先輩(らしき人)は俺の傍へ近寄って来たかと思うと、
不意に俺の顎に手を添え上を向かせた。




「……噂どーりだな」
「え、噂って何ですか……?」


聞いてみてもくつり、と笑うだけで、
答えをくれるつもりは無いらしい。



「……で?逃げないの?」
「逃げる?」




キスなんて挨拶だったし、逃げる必要なんて何もない。
そうこう考えているうちに、時間は過ぎていく訳で。
ふいに先輩の顔がどんどん近付いてきて―――笑った。


「………ははっ」
「?」



笑いが止まらなくなった先輩を見て首を傾げる。
いや、なんか面白いことあった?



「お前、気に入った!(美人だし、タイプ)」
「?(な、なに)」




俺の髪をワシャワシャと撫でて、
先輩は微笑みながら言った。(わ、男前)



「あ、二寮見に来たんだろ?(シャンプーいい匂い)」
「そうですよ!んー他の所回るの面倒だしもうここでいいかな」
「え!見て決めねーの?(嬉しいけど!)」
「はい、二寮に入ります!案内お願いしますね」




おう、と言って笑ってくれた先輩につられて笑う。
(「いや、その顔は反則だって」)
そうそう先輩の名前は難波南って言うらしい。難波先輩、だな。


「ここがの部屋!」




先輩が案内してくれた部屋は元々二人部屋だったらしく、
結構広くて階段の付いた所だった。


「うわー、広いですね!(やった!一人部屋ゲット!)」
「まーな!寂しくなったら、いつでも俺の所へ来いよ!」

明るく言ってくれた先輩に笑みが浮かぶ。
(この先輩と居るとよく笑えるなー)





「なぁ、
「?何ですか?」
「報酬!なんかちょーだいっ」
「え、何か欲しいんですか?」
「じゃー、のチュー!」

そんなんでいいの……?いや、挨拶だよ。
何考えてるんだろ。まー、それでいいんだったら……


「先輩先輩」
「ん?」
「よいしょっと……」




少しだけ背伸びして難波先輩の唇にちゅーする。
最初は本当にするとは思っていなかったらしく、
びっくりしたみたいだった。……てかいつまですればいいの?
とりあえず、これ位でいいかと思い唇を離そうとする。けど、




「!?……んぅ!ちょ、せんぱ……!」


離れようとしても、先輩の腕が頭と腰に回って動けない。
そして、何て言うか……激しいちゅー?をされた。
角度を変えて何度も何度も口付けてくる。



「ん、ふ……くるし(息出来ない!)」
「(うわ、色っぽ…!)」


酸素が無くなり苦しくなって、先輩の胸をドンドンと叩く。
そうすると、名残惜しそうに先輩は離れた。



「っは、くるし、かった……!」
「ごちそーさまでした」
「……先輩、俺男ですよ」
「いや、だったらいーの!」

にこりと笑って言われた言葉に苦笑いする。



「俺、本気出すよ?」
「お好きにどーぞ」

こっちも挑戦的に笑うと、先輩は大笑いして出ていった。
(「じゃ、また後でな!」)



先輩の居なくなった部屋に残った俺は、
面白くなりそうだと笑みを深くする。(ゲームみたいで楽しそう!)







これから本気で猪突猛進/20070829

(やばい、こっちが本気出させられそうだ)

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