「え、ちょっと!……じゃあこの学校に真言居ないの!?」
「……学校違うからな。そりゃ居ねぇだろ」


つまりだ。
間違えて父さんが俺を桜咲に入れた、てことだよな?
マジどんだけだよ父さん!




「……そっか。真言居ないんだ。……寂しいな」
「(!……それって)……まあ、頑張れよ」
「うん、ありがとー。じゃあな」
「おう」




携帯をパチンと閉じて、前を見据える。
(この学校、緑多いなー。いいね自然!)
こっちに校舎があることは変わらないんだから……探すぞ、おー!







「わー、この学校噴水あるー」


さっきの意気込みはどこへやら、噴水の水でパシャパシャと遊ぶ。
空に向かってはねた雫が太陽の光を反射してキラキラ落ちていく(キレーだなあ)。
この学校は広くてなかなか校舎が見つからない。
ため息をつきながら、水面にいくつもの波紋が広がるのを眺めた。




「お前、こんな所で何してるんだ」

後ろから聞こえた低い声にビクリ、と肩を揺らす。うあ、マジびびった!


「……誰?」
「保健医の梅田だ。……お前は転入生、か?」
「そう、俺転入生!」



学校に勤めてる人には珍しく整っている顔を見上げる
(……俺の方が低い。まじでか!)。瞳は日本人っぽくないから、
どっかのハーフか何かかな!……て、待った!


「ちょ、せんせ!顔近い近い!」
「………気のせいだろ」
「実際近いって!も、ほんとっ」



こうしてるうちにも、顔はどんどん近付いてくる。
あ゛ー、先生じゃなきゃ全然OKなんだけどな。
むこうじゃ挨拶みたいなもんだしね……!
でも問題になるのは流石に勘弁だよ。
(見出しは『教師と生徒 禁断の恋!』)


「………先生」
「ん?何………!」




掠め取るように先生の唇にちゅーする(だって誰も居ないし)。
先生は呆然と俺を見つめていて、それが少しおかしくて笑みを浮かべる。
父さんが言ってた『困った時にはコレ!ちゅー+微笑みの最強コンボ!』
はよく効いたみたいだ(やったよ父さん!俺出来た!)。





「せんせ、校舎は?」
「………あっちだ」


まだこっちを見ている先生に、じゃ!と手を振ってからその方向に走る。
いやー、もう流石に一限目始まっちゃったかな!
しばらく走り、見えてきた校舎を眺めながら、ぼんやりと思った。







報酬は唇で前払い/20070825


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