「おいおい、どんだけ無計画だよ真言」
「仕方ねーだろ(一緒に居たい、とか言えるか)」
「まあ、いいけどなー」


話してる間にもタクシーはどんどん進んでいく。
目的地(て言ってもたいして決まってないけど)に向かう中、
俺は昨日と今日起こったことをつらつらと喋っていた。






「色んな寮に誘われたけど、二寮に入ったんだ」
「ああ(……むかつく)」
「でさ、関足と一緒に寝てー」
「……(誰だよ関足って)」
「それに昨日は父さんから教えてもらった技で色んな人にちゅーして……。
 ……あ、結構日本人も初対面でちゅー平気なんだな」
「………今何て言った」
「あ、結構日本人も初対面で−−−」
「違う、その前」
「色んな人にちゅー……?」


一瞬固まってこっちを凝視する真言に眉根を寄せる。
(え、なに?俺なんか言った!?)




「……したのか?」
「え、いや、だって挨拶みたいなもんだろ?」
「そうじゃなくて……」
「?……なに?」


言いづらい事なのか、数回口を開けては閉めるを繰り返した真言は、
何だかよく分からないけど、ため息をついた後窓の外を眺めだした。






「なになに?」
「……だから」
「うん」
「……むやみにキスとかしてんじゃねえよ」


真言はぼそぼそ、とそう呟いた。いや、あの、意味分かんないんですけど。





「え、なんで?」
「いいから守れよ」
「?」
「破ったらただじゃおかねえからな」
「?うん(よく分かんないけどいっか)」


頷いた俺に真言が満足そうに笑った所で、やっとタクシーは止まった。
周りには高層ビルが並んでいて、いかにも都会って感じだ。
外に出て見上げると首が痛くなった。





「わ、すげ!どこ行く?」
「いや、別に……どこでも」
「じゃあさ、ゲーセン行ってプリクラ撮ろう!」
「……プリクラ?」
「あ、嫌だったら別に全然いいけど」
「嫌じゃねーよ。さっさと行くぞ」


俺の横を通り過ぎる真言に手を掴まれて引っ張られ、いきなりの事に慌てる。





「わ、真言速い!歩幅小さくして!」
「ごめんな、足長くて」
「あ!今俺のこと馬鹿にしたろ!」


上にある真言の顔を恨めしげに見上げれば、
笑いそうになってる真言が居て、ふたりで盛大に笑った。
この時はまだ、後ろから見ていた中津たちに俺は気付きさえしていなかった。
(「手!繋いでる!」「ちょっと静かにして中津。聞こえないよ」
 「うるせー!沢目のくせに」「あの二人、幸せそうなオーラ……」)







「わー、最近のプリクラって沢山種類あるんだ」
「さっさと決めろよ」
「分かってるって!じゃあ……これ!」


近くにあったやつに真言の腕を引いて入る。
昔は顔だけしか写らなかったのに、すげーな。




「お、撮るって!」
「……おう」
「ちょ!真言が前行ったら俺写んないじゃん!もー、しゃがんで!
 ……って撮っちゃったし!」
「……」
「げ、次だ!今度こそ俺も写る!」


真言の腕を下に引っ張って、俺の顔と同じ高さに真言がくるようにする。
顔には満面の笑み。(たまには楽しーかも)






「あ、最後!やべ、ポーズ!」

「……

「どしたの?それよりカメ……ん!」
パシャ



シャッター音と共に真言にちゅーされて、目をぱちくりさせる。





「ちゅープリって……恋人かよ」
「まあな(これで悪い虫対策完了、か)」

何がおかしいのかクツクツと笑った真言に首をかしげる。
そして、なんだかんだで落書きも終わり、
(キス魔って書いたら無言で消された。)(だって本当の事じゃんか!)、
携帯の背面にプリクラを貼付ける。
比較的上手く写ってるやつを一枚とり、貼付ける。
否、貼付けようとした。




「わ!なに、何でわざわざちゅープリ!」
「………いいだろ」
「いいだろ、て……ま、いいや」
「……(やべ、なんか嬉しい)」
「次どこ行こ−−−」
「今だ!ー!」


突然出てきた中津たち(え、なんで居んの!?)は、
俺の体を持ち上げるとかついで走り去った。(「まっ真言ー!」)




「ぎゃ、下ろせってば!」
、帰るぞ!(これ以上あいつと一緒に居させるか!)」
「?なんか用事?」
「そ、そう!まだの歓迎会とかしてないし!」
「(な、ナイス中目!)」
「お、なにそれ!すげーじゃん!」


なんかみんなの言ってることがよく分からなかったけど、
歓迎会をしてくれるらしいので俺の意識はそっちの方に向かった。
そのあと近くの道路に待機していた梅田先生の運転するバスに乗り、
桜咲へと戻る俺達。結局、プリクラしかやれなかったけどいいか。







チュープリ撮ろうぜベイベー!/20070921

「ね、歓迎会ってどこでやんの?」
「しょ、食堂!(谷目!みんなに連絡!)」
「(な、なんで俺!)」」

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